「食べられるものの違いで困る人が少しでも減って、みんなが同じものを食べて楽しめたらいいなと思っています」
そう語るのは、大塚駅南口を出て徒歩約4分。
駅前の喧騒から離れた住宅街の中で「ななキッチン」というパン屋を経営されている関根由紀子さんです。
「ななキッチン」の特徴と言ったら、なんといってもアレルギーに対応した安心安全で、美味しいパンの数々です。
今回の取材では、関根さんがお店を開かれるまでの経緯、そしてそのようなパンを作ろうと思われたきっかけ。さらには大塚に対する愛を語っていただきました。
子どものために始めたパン作りが仕事に

「ななキッチン」を開業したのは2015年です。
最初は今のような販売という形ではなく、南池袋のマンションを借りてパンとお菓子作りのレッスンをする教室としてスタートしました。
きっかけは、私には4人の子どもがいて、当時家族6人分のパンを買おうとすると結構お金がかかると感じていたんです。
「それなら自分で作った方が安いんじゃないかな」と思い、パンやお菓子作りを始めました。
それから、やっぱり子どもたちにはできるだけ手作りのものを食べさせてあげたいという気持ちもあったんです。
私は10代の頃に母親になりました。
そういったこともあって、周りから「若いお母さんなんて適当なんでしょ?」みたいなことを言われるのがやっぱりすごく悔しくて。
ちゃんと全て手作りで、子どもたちのために料理やお菓子を作っていこうという想いが強かったんですよね。
なので、料理もパン作りも、きっかけとしては子どもの存在でしたね。
ちなみに「ななキッチン」という店名も、娘の名前から来ています。
名刺を渡すと「ななさんじゃないんですね」と言われることもあるんですけど(笑)。

2015年の開業当時は毎月250名ほどの生徒さんが通ってくださっていて、朝・昼・晩と毎日のようにレッスンを回しているような状態でした。
ただ、数年経つと世間にパン教室がだんだん増えてきたんです。
特に業界では夏休みなど、子どもの長期休暇の時期に大手の企業がパン教室を始めたりすることも多くて。
そういった動きもあって、「専業主婦でパン教室の先生というだけでは、これから先集客が大変になるかもしれないな」と感じるようになりました。
それで、「パン屋さんが教室を始めるなら、逆に私はパン屋さんをやってみようかな」と思い立ち、パンの販売も始めたんです。
今振り返ると、当時はけっこう軽い気持ちで始めた部分もあったかもしれませんね。
みんなが同じものを楽しめるように作る

きっかけは、私自身が4人の子どもを育ててきたことですね。
うちの子たちは幸いアレルギーがなく、何でも食べられたんですが、上の子たちが小さい頃は今みたいに給食でアレルギー対応をしてくれる時代ではなかったんです。
アレルギーなどを理由に食べられないものがあるという子は、お母さんが給食の献立表を見て似たようなものを一生懸命作って持たせていたんです。
そんな姿を見て、「これは大変だな」と感じていました。
パンやお菓子って、バターや卵、牛乳を使うものがほとんどですよね。
パンの原材料を見るとそれらを使っていないものは少なくて、メロンパンやクリームパンといった菓子パンをほとんど食べられないという子がいるんです。
そうすると、食べられるのはベーグルやシンプルな食パンくらいになってしまいます。
みんなと同じものを一緒に楽しめないのはとても寂しいと感じたんです。
そういったことを見てきたからこそ、みんなが食べられるパンを作るようになりました。

実は私自身も、お肉があまり得意ではなくて、今みたいにヴィーガンやベジタリアンという言葉が一般的ではなかった頃は、給食でも苦労した経験があるんです。
だからこそ、食べられるものの違いで困る人が少しでも減って、みんなが同じものを楽しめたらいいなと思っています。
「めっちゃ働く」モチベーション

実は今、母子家庭なんです。
なので、子どもたちが困らないようにという想いで働いていますね。
もともと専業主婦から起業したので、「どれくらい頑張ればいいのか」という感覚も分からないまま、とにかく必死にやってきました。
一人前になるまでは休んでいられないという気持ちで、最初の頃は本当にほとんど休みなく働いていましたね。
子どもを育てていくために一生懸命働いてきたのですが、振り返ってみると周りの方に助けてもらってここまで来れたと感じています。
だからこそ、今はボランティア活動などもやっていて、当時の恩を少しずつ返していけたらいいなと思っているんです。
区のお仕事なども、声をかけていただいたらできることはなるべくやっていこうという気持ちで取り組んでいます。
そうやって地域の役に少しでも立てたらいいなと思っています。
共に支え合う大塚の街

大塚という街は、人と人との距離が近くて、親しみやすいところが印象的ですね。
古い街でもあるので、商店街の方たちの団結力もすごく感じます。
代々お店を続けている方も多くて、2代目や3代目の方もたくさんいらっしゃいますし、長くこの街を見てきた人が多いんだろうなと思います。
私はよくスナックに行ったりもするのですが、ママが「このお店ももう25年になるのよ」なんて話してくれたりして、街の歴史を感じます。
商店街の人たちもとても仲が良くて、長年一緒に商売をしてきたからこその関係があるんです。
例えば、拠点がまだ南池袋だった時に行商で大塚に来ていたことがあったのですが、その時に南大塚商店街の「桃太郎」というお寿司屋さんの奥さんや、「とんかつ赤尾」のお母さんなど、昔からのお店同士で支え合っている姿をよく見かけました。
お昼にお店にいると、「お昼まだでしょ」と言って食べ物を持ってきてくれたりするんですよ。
そういう光景を見ると、何十年も一緒にやってきたからこそなる関係なんだろうなと思いますね。
それぞれ別の業種のお店でも、みんなでこの街を盛り上げようとしている感じがあるんです。
そういうところが、大塚という街のすごさだなと思っています。
大塚にある個性豊かな店と人

大塚には長く続いているお店が多くて、素敵なお店がたくさんありますよ。
例えば「キッチンズッカ」さんっていう、文京高校の近くで約20年ほどやられているイタリアンのお店があるんですけど、おすすめですね。
それから「バロッサ」さんもおすすめです。イタリアンベースのお店で、カレーが有名なんですよ。
それから、お味噌屋さんの3代目で、お店をやりながら歌も歌っている方もいらっしゃいます。
「大塚物語」という歌を歌っていて、こういう面白い方がいるのもこの街らしいところだと思います。
あとは都電沿いにある「すし本」さんも、個人的に仲良くさせてもらっているお店なんですけど、美味しいのでおすすめです。
地元の人たちが集まる場所としては、南大塚商店街の中にある「末廣鮨」さんがあります。
ここは今3代目がやられているお店で、今は4代目も一緒に働いているんです。地元の飲み会や集まりがあると、みんなでそこに行くことが多いですね。
大塚には昔からのお店のコミュニティもありますし、新しいお店同士のつながりもあります。
私はたまたま両方の方と関わらせてもらっているんですが、そういういろいろな人たちが集まっているのも、この街の面白いところだと思います。
特に「ズッカ」さんと「バロッサ」さんには、ぜひ行ってみてほしいです。
大塚を一言で表すなら?


