ゲーム制作を豊島区の文化に|『バーチャルとしま』企画者の池田秀一さん

大塚人インタビュー

豊島区の小中学生が集まって、自分たちでデザイン・制作したゲーム『バーチャルとしま』。
2025年の11月〜12月に実施された小中学生向けのゲーム制作教室を通して作られました。

バーチャルとしまのHP写真

このプロジェクトをゲーム制作教室として企画・運営を担当したのがマイボクセル株式会社代表の池田秀一さんです。

今回のインタビューでは、豊島区のメタバース開発やNFTアバターの始まりに迫る取材のもと、現在公開中のバーチャルとしまの世界を特別に紹介いただきます。

ブロックチェーンゲームの世界で豊島区を表現『バーチャルとしま』

池田さん。

『バーチャルとしま』は、豊島区からの相談をきっかけに始まったプロジェクトです。「メタバース空間で何かできないか」──そんなお声がけをいただいて、子どもたち自身がゲームを作りながら豊島区の街をバーチャル空間に立ち上げていく、ゲーム制作教室として企画を膨らませていきました。

ゲーム制作の楽しさを共有したい、仲間と協力して一つのものを作り上げる体験を届けたい。その思いも込めながら、形にしていきました。

このゲームは参加してくれた子どもたちだけでなく、多くの方にお見せする機会が欲しくて、今回はバーチャルとしまの中を散策できるようにしています。

使ったゲームは The Sandbox というプラットフォームで、プログラミングの知識がほとんどなくても、クリエイターが自分たちでゲームコンテンツを作れるようになっています。

今後はシューティングゲーム(FPS)のような要素が追加されるなど、より楽しめる世界になっていくと思います。

バーチャルとしまの街の様子。

今みえているは、The Sandbox で作った世界のうちの一つで、ボクセルを組み合わせたデジタルアートの集合体として出来上がっています。全部を一から作っているわけではなく、もともとこのゲームに入っているテンプレートも活用しながら作っています。

小さなクエストがあったり、街にNPCがいたり、RPGっぽい要素もあります。

ゲートの入り口。

コインを集めたら、案内人に話しかけてゲートの中に入ってみましょう!

山手線がモデルの電車。

この電車は山手線をイメージしていて、バーチャルとしまに参加してくれた小学生たちが作りました。
よく再現されていますよね!

ゲーム内の遊園地。

さらに奥に行くと遊園地があります。右にあるメリーゴーランドも、小学生たちが教室で作ったものです。

ゲームを教える池田さん。

この観覧車のような遊具に乗ってアイテムをゲットすると、ダンジョンへの門が開くようになっています。

門の中にあるステージ。

門の向こうは地下ダンジョンのようになっていて、大量のクモが襲ってきます!
敵のクモを倒しながら迷路を進む必要があるので少しむずかしくなっています。

こんな感じで、バーチャルとしまは豊島区を舞台に色々なゲーム要素が組み合わさっていて、ゲーム内のいたるところが小学生たちによって制作されています。

ゲーム制作に出会って、やっと自分のやりたいことがはっきりした

池田さん。

小さい頃からゲームをするのが好きで、特にFF(ファイナルファンタジー)シリーズが大好きでした。
一番好きなのは FF10(ファイナルファンタジーⅩ)で、高校生の頃に初めてプレイしたときに、ゲームの中で自分が映画の主人公になったような体験ができて本当に感動しましたね。

この頃はまだプレイヤーとしてゲームを楽しむだけで、ゲーム制作をしたことはありませんでした。

大学を卒業した後は、物流会社、製造業での経理、コンサル会社、広告代理店など色々な業種で働いてきました。

何か自分で始めてみたいという気持ちはずっとあったのですが、自分が何をやりたいのかは明確になっていなかったですね。

でもその後コロナ禍で家にいる時間が増え、そこで初めてゲーム制作というものにようやく出会いました。

ゲーム制作を通して自分でコミュニティを作り、その中で気の合う仲間たちとゲームを作るという体験ができて、すごく面白くて。
そこでやっと、自分が何をやりたいのかがはっきりしました。

最初に手を出したのが、NFTアート──ブロックチェーン技術(ブロックをつなぎ、データを鎖のように連続して管理するデータベース技術)を用いたデジタルアートです。
ボクセルのキャラクターを作って売るところから始め、可能性を感じるきっかけになり、一気に方向転換していきました。

現在はクライアントワークとゲーム制作の2つの領域で活動しています。
クライアントワークでは主に経理の業務支援を担っていて、ゲーム制作は豊島区や企業のプロモーション用のゲームを作っています。

バーチャルとしまの他にも、不動産会社の事業を紹介するゲームを制作しました。
ゲームを通して、アバターがガイダンスを進めながらその会社の事業を直感的に体感できる小さなゲームです。
ほかに自社企画のゲーム制作も手がけています。

これまでは個人事業で活動していましたが、2026年4月に法人登記して、マイボクセル株式会社になります。

「まずやってみましょう」豊島区地域区民ひろば課との二人三脚で

池田さん。

このプロジェクトのきっかけは、豊島区の地域区民ひろば課の高井係長からいただいた「メタバース空間で区民ひろばを作ってみませんか」という一本のご相談でした。

高井さんは、私が会社員から独立したばかりの頃に豊島区へ営業のお電話をかけたとき、真剣に話を聞いてくださった方なんです。
そのときのご縁があって、今回の相談をいただきました。

今回のプロジェクトでは、区民ひろば課の高井さんと新井さんに伴走していただく形で進めていきました。

企画・運営の実作業は私のほうで担いましたが、豊島区内の各所との調整、参加する子どもたちや保護者への告知、当日の現場でのサポートまで、高井さんと新井さんが一つひとつ支えてくださったからこそ、形にすることができました。

なかでも一番うれしかったのは、高井さんが「まずやってみましょう」と背中を押してくださったことです。
小学生がメタバース空間で街をつくるという取り組みには前例がなく、それでも最初の一歩を一緒に踏み出してくださった。
その判断があったからこそ、子どもたちに「自分たちの街を自分たちでつくる」という体験を届けることができました。

のべ10時間ほど、子どもたちと一緒にブロックを積み上げて、バーチャルとしまの世界を作りました。

ただ10時間では出来上がらなかったので、ロボットとの会話やキャラクターのアビリティの設定など、小学生では手がまわらない部分はこちらで作り、結果的には30〜40時間相当かかったかもしれません。

終始楽しくて、大変さを感じる瞬間はほとんどありませんでしたが、少しだけ苦戦したのが、小学生たちの集中力が途切れるとゲーム制作よりもゲームをプレーしたいと言い出すんですよね。
ゲーム制作未経験の小学生たちの集中力を途切らせないようなサポートをするのはすこし大変でしたね。

それでも完成したゲームをみんなが楽しそうにプレイしている姿を見て、頑張ってよかったなと感じました。

ゲーム制作の楽しさを豊島区民に広げたい

ゲーム制作を豊島区の文化にしたいと思っています。
今までゲームをプレーするだけだった人たちも、自分でゲームを作って、それを世に出して、みんなでプレーして、感想を送りあって、今まで出会えなかった人たちと出会ってほしいです。そういう体験が広がって豊島区の当たり前になってほしいですね。

というのも、今はエンジニアでない方でもAIを使えばゲーム作りができるんですよ。僕はClaudeというAIを使っているんですが、簡単なゲームであればAIとの対話だけでゲームは出来上がります。

大塚を一言で表すなら?

池田さんと池田さんのアバター。

大塚を一言で表すと、「冒険者の町」です。

大塚はあたたかい人が多い印象があります。
独立した直後にボクセル教室をやる場所を貸してくれたironowaさんだったり、地域区民ひろば課の高井係長や新井さんをはじめとする豊島区の職員の方々だったり、チームとしま(「豊島区をよりよく」という想いに賛同する企画・団体・任意実行団体が交流し、つながるための取り組み)だったり、皆さんあたたかいんです。

大塚で好きなお店は『eightdays dining』です。

シカマ

GOtsukaを運営する㈱アナザーパスのインターン・ライター。大塚で働く大学二年生。愛するものは二次元に置いてきた。19年間生きてきて大塚との関わりは一切無かったが、GOtsukaの運営を通して大塚への愛も深めていくそうだ。