『宇野書店』は2025年8月に、北大塚にある東邦レオ株式会社(以下、東邦レオ)の自社ビル2階に誕生しました。
この『宇野書店』は批評家の宇野常寛氏のプロデュースのもと東邦レオと共同で立ち上げた「まちの公共空間」としての書店。
店内に並ぶ本は全て宇野さんの選書によるもので、その数は6,000冊にも及ぶそうです。
宇野さんが自身のメディアや取材を通したPRやトークイベントの企画を担当する傍ら、東邦レオの『宇野書店』運営メンバーが業務の合間を縫ってイベントの企画運営、SNS発信、ポップの作成などを行い、この書店を裏で支えています。
今回は、そんな『宇野書店』運営メンバーである須佐 百姫さんと山口 薫さんにお話を伺いました。

宇野書店の運営は本業と並行して行う

山口さん「まず東邦レオという会社は、元々黒曜石パーライトという材料を使った軽量コンクリートなどを販売する建築建材メーカーとして創業しました。
この黒曜石パーライトを都市緑化に活用し始めたのが第二創業期となります。
この時、東京都が条例によって屋上緑化を義務化したことによって、環境対策の分野にも関心が集まるという世の中の流れもあり、東邦レオは緑化の会社として認識されていきました。
私も元々造園設計に携わる仕事をしていて、近しい分野だったこともあり、東邦レオに転職してきたという背景があります。
その後、2016年に3代目の社長として外部から吉川が入って来たことで、それまでの建材や緑化などの技術屋としての事業だけでなく、その上で生まれる人のいる風景に注目した事業を行うようになりました。
この『宇野書店』もそのひとつになります。」
須佐さん「私は入社1年目です。学生時代にインターンをしていた英会話スクールの上司からの紹介でこの東邦レオを知りました。
説明会や選考を受けていく中で、着飾らずに、自分らしく居れる、そんな会社の雰囲気にとても魅力を感じ入社を決めました。
現在は、マンションの管理組合の方を相手に、外構部分のバリューアップ提案や管理から、マンション全体の交流が生まれるようなコミュニティ作りといったことまでをメインの業務としてやらせてもらっています。
そのメイン業務の傍らで、『宇野書店』の運営メンバーとしてSNSでの発信を行ったり、イベントを企画したり、ポップを描いたりという形で携わっています。」

宇野さんの一言が契機となり、以前の空間を活かしながら開店

須佐さん「宇野さんと弊社は、以前にまちづくりのプロジェクトでご一緒したことがあり、元々繋がりがありました。
そんな中、宇野さんが自身のSNSで「書店をやりたい」という想いを投稿されていて、それを見た代表の吉川が「ぜひうちでやりましょう」と声をかけて、実際にこの自社ビルの2階部分を使って書店を開くことになりました。
宇野さんには、6,000冊にもわたる選書をしてもらい、私たちは空間作りやイベントの企画や運営などを行い、この『宇野書店』をより良いものにしていくパートナーとして、常に連携を取っています。
山口さん「宇野書店にはもう一つ目的があります。それはこの空間を通じてビルの不動産価値を上げていくという試みです。ある意味、実証実験の場とも言えますね。
現在、『宇野書店』として使っている自社ビルの2階スペースですが、以前はここを使って学生の起業家たちと企業をマッチングするという事業を行っていました。
この宇野書店の緑の多い内装やイスなどもその時に使っていたものを再利用しています。
元々あった空間を活かしながら、書店としての要素を加えて作っていったような形ですね。」

『宇野書店』によってこのビル、そして大塚に人の動きを生み出す試み

須佐さん「実は、私たちは宇野書店での本の売上を収益源にしていません。
本の売上でマネタイズするのではなく、自社ビルのブランディングと大塚のエリアブランディングを目的としており、この書店作りを通して、このビルの価値や印象をいかに上げていくか、このビルに足を運んでくれる人をいかに増やすかという実証実験としてこの事業に取り組んでいます。
宇野書店によってこのビルに足を運んでくれる人が増えれば、それだけこのビル全体の価値が上がりますよね。
そうすれば、このビルを借りたいと言ってくださる人も増え、結果的にこのエリアやビルに共感してくれる素晴らしいテナント様に入居いただける可能性も高まります。
個人的には、この宇野書店のコンセプトが大塚という街にとてもマッチしているのではと思っていて。
大塚って、昔から続く個人経営のお店や一風変わったエスニック料理店などが多くて、万人受けするよりも刺さる人には刺さる、個性あふれる街だと感じています。
そして宇野書店に並ぶ本も宇野さんが独自の視点で選んだ本です。
万人受けはしないかもしれないけど、刺さる人には刺さる。
大塚という街だからこそ生み出すことのできたお店だと思います。」

山口さん「このビルの価値を向上させるという目的もある宇野書店ですが、実際に宇野書店に立ち寄るために初めて大塚駅で降りた、と言ってくださるお客さんも増えています。
そういった来る人を変える、人の動きを生み出すことが場所の価値を一番変えていく、と代表の吉川もよく言っていますね。
都会やネットの喧騒から離れられる幸せな空間
須佐さん「私自身も、仕事の合間にふらっと立ち寄ることがありますが、両端にある長いベンチに座りながら本を読むのが好きですね。

他の書店ではなかなか見かけない本が多く置いてあるので、たまたま目に入った面白そうな本を手に取って、お気に入りの場所で座って読むのが好きです。
いつもの忙しい日々を忘れさせてくれるような幸せな時間になっています。
山口さん「今って、どうしてもインターネットからの情報に頭がいっぱいになる日々だと思うんです。でもここでは、そうした情報の海から解放されて自分の興味・関心が赴くままに本を楽しめます。
本の並びも本当にランダムに置いてあるので、「この本が欲しい」と思って決めて買いにくるよりも、ふらっと来てその場で興味を持ったものを実際に手に取って読んでみる、という楽しみ方がおすすめですね。

ーーーオススメの一冊を教えてください!
須佐さん「スズキナオさんの『家から5分の旅館に泊まる』という本が面白くて読んでいます。
日常に疲れた作者が、どこか遠くの旅館などに泊まりに行くのではなく、自分の身近なところにも心安らぐ場所があるんだよ、ということを書いた短編集のような一冊です。
まだ少ししか読めていませんが、これからじっくりと楽しんでいきたい一冊です。」
山口さん「藤原辰史さんの『食べるとはどういうことか』が面白かったですね。
大学教授の藤原さんと中高生が「食べるとは」というテーマで話し合った記録がそのまま書かれていて、スピード感もよくとても面白かったです!」
今後はより地域に根ざした存在に

須佐さん「最近は書店を利用してくださる方の中にはリピーターの方が増えてきた印象です。また月に1、2回ほど宇野さんと著名な方とのトークイベントを開催していますが、毎回チケットは完売になっていて、とてもありがたいです。
今は宇野さんのファンの方々にとても支えていただいていますが、今後はより地域に根ざし、大塚の方々にも愛される書店になっていきたいです。
そのために、地域の方たちとのイベントや音楽系のイベントを開催するなど、書店としてだけでなく、様々な形でこの空間を活用していきたいですね。」
私にとっての大塚
山口さん「大塚内での好きな飲食店というと、居酒屋の『地酒や もっと』さんには大塚に来た人をよく連れていきますね。
それから『とんかつ 美濃屋』さんは人気でいつも並んでいる印象がありますが、とんかつだけじゃなくお米が美味しくて好きです。
あとは『らあめん あじるく』さんですね。
私は大阪の本社から転勤してきたので、大塚を一言で表すなら…「東京のふるさと」ですかね!」

須佐さん「私は大塚の飲食店では、南大塚にある『大衆イタリアン バール青ィ印』というお店が好きです。店主の方が一人でやられているとても雰囲気のあるお店で、とにかく美味しいです。
そして、大塚は「個性が残る街」だと思います。
そんなこの街で、宇野書店ならではの個性を発揮して、街の人々が自然とあふれる場所にしていきたいです。

| 店名 | 宇野書店 |
| 住所 | 東京都豊島区北大塚1-15-5 2F |
| 営業時間 | 〈平日〉10:00 – 21:00 〈土日祝日〉12:00 – 20:00 |

